忍者ブログ
散り行く華は潔く、 少女の祈りと共に散れ。 嗚呼、今宵も。彼女は君に眠りつく。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

すべての地位や義務や誇りを捨てて、お姉さんに会いに行きたい。



葛「もう、私は世の中に帰れない・・。」


烏月「左様でございます、葛様。 葛様は鬼切り部の頭です。しかも、若月グループの次期会長です。


陰陽師の末裔にて、鬼を封じる者達の頭・・・立場を弁えてください。」



葛「分かってます。
小さい頃から我が一族は使命があると教わっていました。
私は家業を理解しています。」


烏月「よろしいです。
そうです、そうあるべきです。
葛様の肩には多くの先祖から受け継いだ伝統と、私のような部下が乗っています。」


そうだ、私は特別な一族に生まれた。
私は、鬼と闘う者達の長なのだ。



烏月「桂さんとは、もう会えないです。

明日は、葛様が若杉グループの会長に就任する事を祝福します。
桂さんと別れを告げるなら、本日中に。」



―――――――


桂お姉さんと私は、最後に公園で待ち合わせをした。
夕焼けが綺麗だった。


葛「桂お姉さん、私もしかしたら暫くお姉さんとは会えなくなるかもです。」


桂「え~、なんで・・。」


葛「私が15歳に成るのを記念して、会長に就任します。
といっても、会社の事は幹部会がほとんど仕切るのですけど。

・・・で、色々忙しく成るかもしれないですし。」


桂「そうか、なら仕方がないよね。」



あれ、何で止めてくれないの?
なんで、泣いてくれないの?



葛「お姉さん・・引き留めないんですか。」


桂「だって、大企業の会長さんなんでしょ。
だったら、超贅沢に生きられるじゃん。

私の就職とかもちゃんと、良くしてよね。」


ああ、そうか。
桂お姉さんみたいな庶民階級の人は、お金と権力があれば幸福に成れると思っているのか。



そう、若杉の力があれば、
マスコミも司法も自由に操れる。
日本の首相を誰にするかだって決められる。
お金の力は偉大だから、何でも出来るのだ。


リゾートも沢山持てるし、
自家用飛行機だって持てる。


そうだ、だからこれで良いのだ。


葛「はい! お姉さんの人生も、私の権力でなんとかして差し上げます。」



何故か悲しかった。


―――――――――――



翌日、私は薄暗い、大きな部屋に居た。
会長就任の儀式も、宗教的な形で行われる。
今の就任の儀式の形は、鎌倉時代からの伝統らしい。



30人くらいの神官らしき人が、
何やら深くお辞儀をし合ったり、
変な口調で祝福の言葉を斉唱した。


宮内庁から派遣されたらしい官僚とか、
神社本庁の偉い人とかも来賓しているらしい。
宗教とは権威であり、ただの権力だ。
私のような特殊な一族からしたら神秘の真似事だ。


これら儀式は伝統であり神聖なる意味が有るのだろう。
しかし私は、興味が一切なかった。


儀式の1つ1つの、プログラムには何らかの意味があるらしい。
人間は行動や習慣に意味を持たせたがる。
これらは1000年以上続く伝統らしい、しかし私には価値が全く無かった。



古くても新しくても善し悪しは変わらないし・・、
それに、私は宗教が昔からキライだった。
信仰のための儀式など、形だけで愛情とは何も関係ないし、
宗教を中心に文化を築くのは野蛮な事だと思っていた。


私は、なにやら綺麗なコップに注がれた水を差し出された。
それを飲み、儀式は終わった。


―――――――――


それから私は、桂お姉さんとは会わずに年を越した。
私は16歳に成っていた。


この年に桂お姉さんは私は会ったのかな・・、もう覚えてないや。


だけど、私は今もどこかで探している。
桂お姉さんの温もりを。


桂お姉さんは就職したのかな?
一応、幹部会に根回しを宜しくとだけ言っておいたけど。


私は、友人は1人も居ない、
誰も理解者は居ない。
関係があった人とは縁を切った。
烏月さんとすら月に3回会えばよい方だ。
鬼切り部の長だが、千羽党を指揮する事は無い。


ある日、私の所に世話役の1人がやって来た。
私が18に成ったら見合いをするから、覚悟しろとの事だったのだ。


若杉では当たり前だが、
結婚は会社の外交の一環として行われる。
打算や「しきたり」が全てなのだ。
個人の気持ちよりも、義理やしがらみがすべてなのだ。



桂さんお姉さんに会いたい・・・。
私はある夜にふと思った。


私は圧倒的な富と権利と伝統を背負ったが、
愛情に飢えていた。


そうだ、私には言霊を操る力がある。
・・・私は賭けをしてみた。



毎日、祈った。
呟(つぶや)いた。


桂お姉さんと会いたい。
桂お姉さんと会いたいと・・。

幾度の日も・・。



―――――――――
―――――――――


私はマンションの一室で独り暮らしだった。
どういう経緯か私は、町役場に就職できた。
突然スカウトが有ったのだ。

私はコネとか一切無かったのに地方公務員で、しかも資料室の管理という楽な部署に行けたのだ。


こんなに美味しい話・・・まさか、
葛ちゃんの権力で・・・・まさかね、考えるのはよそう。


彼女は過去の人だ。
あの時、彼女は満面の笑みを残して、私から去っていったのだ。


ピンポーン



チャイムが鳴る。
なんだろう、こんな時間に。
今は夜の10時だ。
押し売りでは無いだろう。
まさか物もらいでも有るまい。


ガチャ


ドアを開けた。
いつもなら、相手が誰か聞いてから開けるけど、何故か今回は正体を確かめずに開けてしまった。


・・・・嘘でしょ。
・・・・・なんで。


そこには私が無くした、私の何か大切な存在が居た。


葛「桂お姉さん。
・・・・見つけました。」



桂「どうやって探したの?」


葛「権力を駆使すれば、パソコンで一発、個人情報を盗み出せます。」


私は声を震わしながら質問を続けた。

桂「今まで、どこで何をしていたの?」


葛「鬼切り部の筆頭をやってました。
別れる前に言いませんでしたか?」


私は泣きながら、彼女に抱きついた。


桂「葛ちゃん。 うぅ、ばか。
今までなんで連絡くれなかったの。」


葛「仕事柄、自由が無かったんですよ。
だけど・・・・言霊パワーでなんとかしました・・、
それは・・・毎日・・。」


私は葛ちゃんとお互いに泣き会った。


私があの公園で、なぜ葛ちゃんを引き留めなかったか。
それは、彼女を思っての事だった。
私はその事を謝りたいと思った。

私は今だから、正直に言える。

「葛ちゃん、あのね。
私は、本当は・・・。」


――――――――――――


私は葛ちゃんとこたつに入りながら、
色々と話し合った。
今までの事、これからの事。


桂「葛ちゃん、鬼切り部には戻らないって・・。」


葛「はい。 部長職は引退です。
何とか庁や、何とか連盟のおじさん達の都合で生きるのはもう沢山です。」


桂「それって、無責任じゃないかな。」


葛「無責任で結構です。
お姉さんと居られないならば、毎日が楽しく無いですから。」

私は嬉しかった。
だけど本当に良いのか不安にも感じた。
だけど考えるのはよそう。
今はもう、あらゆる義務や道理や理論は必要ないからだ。


葛「さて、もう少し逃げましょうか。
・・・・一応、書き置きしてきましたけど、
私は職務を全部放棄しましたから、様々な方面から追っ手が来るでしょう。」

桂「逃げましょうか・・・って準備も何もしてないし。
だいたい、お金はどうするの?」


葛「とりあえず、200万円は現金で持ってます。
安いビジネスホテルでも見つけましょうよ。」

桂「え~! 本当に逃亡生活するの?」


葛「まあ1ヶ月くらいですかね、お姉さんと逃避行できるのは。まあ、この1ヶ月を長旅だと思って、楽しみましょうよ。」


桂「私の仕事とか・・。」


葛「そんなもの、捨てましょう。
大丈夫、地方公務員なら人手は余ってる筈です。
次の職業も一緒に考えましょう。」


これは冒険主義かもしれない。向こう見ずで愚かで、身勝手な行動だろう。
馬鹿だと分かっている、だけど・・・。


桂「周りに迷惑かけるけど、・・・もう良いよね、これ以上我慢するのは。」


葛「はい。若い時代は周りに迷惑をかけて成長するものです。・・・・お姉さん、逃げましょう。」


私達は若気の至りから、かなり間違った道を進んでいるのかもしれない。
だけど、その道を今選ばないという選択は出来なかった。


あらゆる、伝統・しきたりを背負った鬼切り部の頭は、
自分勝手にその地位を降りた。


私はマフラーを巻いて、
車の鍵を手に持った。
少しばかりの荷物と。



葛「やっぱり私は、上流階級は無理でした。
やっぱり根がキツネですね~。我慢は病の元ですし。」


桂「籠(カゴ)の中の鳥は、外に出たがるもの・・。」


葛「そうです。
エサも貰えるのに、逃げたがる。
無鉄砲で馬鹿みたいな考えです。
でも、仕方がないじゃないですか。
どうせ人間は120年が寿命の限界です、だったら素直に生きた方が良くないですか。」


桂「そうだね。
っていうか、鬼切り部の頭は他に誰が・・・。」


葛「あんか役職、実は誰でも出来ますよ。
多分、まあ親戚の誰かが代理でもするでしょう。」


桂「現金200万円・・、テレビとかで若杉会長家出とか成らなきゃ良いけどさ。」


葛「大丈夫です。メディアなら金をばらまけば黙ります。
世の中、金持ちが勝ちますよ。」

桂「たはは、・・・なんか、悲しい社会のような。」


葛「社会なんてものは有りません。さあ、ちゃんと前見て運転してくださいよ。
逃避行はまだ始まったばかりです。」



===あとがき==


後半、力不足かな?  ヽ( ´・ω・)ノ





拍手[0回]

PR
※適当で都合の良い設定



井戸から脱出した後、
白狐のオバナは双子の鬼霊たるノゾミ&ミカゲからツヅラ達を守るも命絶えてしまった。
葛は言霊使いに覚醒し、ノゾミ達を返り討ちにするも・・・代償は大きかった。


古屋に戻った、桂と葛達はサクヤと烏月とちゃぶ台を囲み、
双子をどうするか考えていた。


捏造注意w


――――――――――――――――


烏月「しかし、あの双子は相当に強力な存在らしいな。参った・・。」

サクヤ「鏡に取り憑いた霊なら、鏡わったら良くね?」

烏月「その通り、だけど、どうやって探すんだ。
貴女の野生の感か?」



深夜、4人はちゃぶ台を囲み、色々と話していた。
これからの事、今までの事。


桂はふと葛に目をやる。
もふもふの尻尾と耳が生えた葛は、今やオバナと1つに成ったのだろうか?
今まで葛と共に居たオバナの、
突然の存在昇華をまだ小さい彼女は受け入れられるのか。
肉親を無くした桂は思った。
葛はひたすら下を向いて座っている。



桂「あの~、お二人さん。
会議中に悪いですが、葛ちゃんが眠そうだから、お布団の準備してあげて良いですか?」


サクヤ「そうだな、葛はもう疲れたろ。
お眠り。」


烏月「サクヤと二人なら話が進まないだろうから私も寝るよ。」


桂「それが布団3人分しか・・。」

烏月「私は畳で寝るよ。 あの野犬なら外で寝れるだろうが・・・。」



サクヤ「こういうのは、年寄り優先なんだよ。悪いね。」


桂はすっかり眠っていた葛を抱き抱えると、個室に運んだ。


――――――――――――――




――――――――――――

布団を敷いて葛を寝かせた。

桂(途中で起きるかも・・。今夜は隣で、寝て上げよう)


桂は自分の部屋から布団を持ってきた、
そして葛のすぐ隣に敷いた。
電気を消して、床につく。


葛にはもう狐耳が生えて無かった。
こんな小さな体で彼女は色々な試練に耐えていたと考えると、
桂は胸が熱くなった。
若杉のしがらみや打算だらけの世界からの逃亡、彼女は何を求めていたのか。



私も寝ようと思った。
そしたら。



葛「ケイおね―さん・・・。」


葛はか弱い声で囁いた。


桂「・・・何? 葛ちゃん、どうしたの」

葛「オバナは、私のせいで死んだのでしょうか?」

桂は少し戸惑った。
何て言えば良いのか?
気にしないでとか、そんな事無いよなんて言っても気休めにも成らない。
桂は知っていた。


葛「私は他人と居たら駄目なのでしょうか・・。オバナは死んじゃうし。
桂姉さんを変な事件に巻き込むし。
私は・・・誰かと居たら・・・」


桂「違うよ・・。
葛ちゃん、オバナちゃんは葛ちゃんを守りたくて、それで・・・」




葛がすすり泣いたのが分かった。


葛「でゃけど・・。オバナはもう・・。」泣きじゃくり方はまだ少し子供らしさが有った。



葛「オバナはもう居ないんだ。
あんなに可愛いオバナに・・・私、怒っちゃったよ。」


彼女が初めて見せた弱さだった。



葛「オバナが居た頃、私は幸せだったのに、
私はそれを精一杯感じて無かった。
毎日、いつまでもオバナと居られると思っていた。」


桂「あのさ、葛ちゃん、オバナちゃんは死んだけど・・。
ツヅラちゃんの中では生きていると思うの。
その力もオバナちゃんを通して、得られたのかもしれないし・・。
(よく分かんないけど)

全てのエネルギーは不滅だし、
葛ちゃんがオバナちゃんを思い、
葛ちゃんが成長出来たならば・・。」


葛は泣いたままだった。


桂は葛の布団に入って、
葛を寝ながら抱き締めた。
今まで、毎日居たオバナだが、
居なくなってから初めてその重要性に気がついたのだ。


桂はよしよしと背中を撫でた。

葛「桂お姉さん・・・。」


桂「何? 葛ちゃん・・・。」


葛「何だか、桂お姉さんがお母さんみたいだなぁって思ったんです。」


桂「葛ちゃん・・。私も、葛ちゃんが妹みたいだって思ったよ。
よく色々と耐えた成って、思ったんだ・・。
私も誰かにこんな風にされた気がする、
だから今、優しく葛ちゃんにしてあげられるんだと思う。」


葛「お姉さん・・・今、私が泣いたのは、誰にも言わないでくださいね。
・・・オバナは私を守ってくれました。
だから、私は生き延びた者として、言霊の力を・・・・。」


葛の小さい体は震えていた。
この小さくて若い身体に多くの歴史や琢磨が詰まっているのだ。


葛は頬に涙の跡をつけて、眠った。
桂は葛ちゃんを抱いたまま深い眠りについた。



葛何か寝言を言ったような気がした。
しかし、桂には良く聞こえなかった。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


その夜、
桂はある夢を見た。
大切な人が居なくなってしまった悲しみが、再び蘇る。
その夢は古い小屋のような場所で、
双子の子供が、封印された鏡を見つけるシーンから始まるのだった。







拍手[1回]

アクセス解析
カウンター
アクセス解析
プロフィール
21歳。 実家のカレー屋に勤務。 最終学歴は北嵯峨高等学校。 つまり高卒さ。(^o^)ゝ ぱっとしない平和な人生を歩む。 人生は難解だからこそ、神に預けよう(謎の台詞)       ☆家族 父・母・妹・犬で4人家族犬付き。       ☆性格  やや短気。感情的に成りがち。  せっかち。 ↑直すように努力したい・・、orz
HN:
紅月乃夜
性別:
非公開
自己紹介:
☆独り言 人間は自分の内面に向かい、 性格を直すために生きているのか。 ならば私にやれる事はひとつ。 毎日を真面目に生きる事だ。
忍者ブログ ☆[PR]